「Mr.Musashino. 本当にありがとうございます」

「何度、言ったら分かるんだ!?"Mr."も"no"も要らないと言ってるだろ」

武蔵はベッドの上で仰向けになっている。
上半身は裸で下半身には布団が掛けられていた。

※因みに此処での会話は英語で行われている。

「いえ、そういう訳にはいきません。私にとっては大切なお客様なのですから」

ベッドの脇にテーブルと椅子があり、ガウンを着た女が一人、座っている。
そのテーブルの上に少しだけワインが注がれた、ワイングラスが乗っていた。

「それはお互い様だろ!?しかも、俺の方が過分な金銭まで頂いている」

「いいのです。それが私の感謝の気持ちです」

「勿論、くれるもんは貰っておく。その分で貧しい者をマネージメントする為の経費に回せる訳だから」

「是非、そうして下さい」

女はワインを一口だけ飲んだ。

「ただ、俺は金で仕事をしている訳じゃない」

「じゃあ、何で仕事をしているの?」

「俺の仕事に対する正当な報酬は女の体だけ」

「あら、まぁ。ゲノムマネージャーらしからぬ、お言葉」

「俺は出来損ないだからな」

「じゃあ、マネージメントはセックスをする為の口実なのかしら?」

「そう思うなら、そう思って貰っても構わない」

「契約の時の説明ではマネージメントの手段がセックスだとの事でしたわね」

「そういう事。それを信じるかどうかは君の問題だ」

「信じるわ。だから疑問もあるのよ。何故、そうまでして女性の体に拘るのか」

「過分な金銭を頂いちゃっているからな。仕方がない」

「あなたも結構、律儀なのね」

「君程じゃないさ」

「そうかしら!?」

「まあ、いい。話を続ける」

「どうぞ」

「先ずゲノムマネージャーのマネージメントの手段は人それぞれ。そんな中で俺の手段はセックスだった」

「他にもその様なゲノムマネージャーはいるの?」

「いや、恐らくは俺だけだろう。他に聞いた事は無いからな。世界に100人程しかいないゲノムマネージャー。もしいたら、耳には入ってきているだろう」

「そうなのね」

「そして俺はマネージメントの手段がセックスだから、女性専門のゲノムマネージャーになるしかなかった」

「それが不満なの?」

「若い頃はそれがコンプレックスだった」

「なるほどねぇ」

「でも、ある時、気付いた」

「何に?」

「それもまた、俺に割り振られた役割だと」

「役割ねぇ」

「そして、そうやって割り切ると、結局、命の基は雌なんだって」

「雄は雌の突然変異なんて話は聞いた事があるけど」

「その基となる女さえ救済が出来れば、そこから連なる全てを救済する事にもなる」

「なるほどねぇ」

「だから俺は俺で自分に与えられた役割を果たせばいい。男のマネージメントが出来ない事で卑屈になる必要は無い」

「そうね」

「ただ、俺にとっては女がこの世界の全てであり、女の体だけが全て」

「そういう事だったのね」

「だってそうだろ!?何故、俺はゲノムリーダーとなったのか」

女は微笑んだ。
武蔵が言葉を続ける。

「俺のこの特殊な能力を活かしてくれるのは、女の体だけ」

「そういう事になっちゃうのかな。話を聞く限り」

「だから俺にとっては女の体が最高の報酬となる。そして金は厚意による寄付の様なものにしか過ぎない」

「分かったわ。もっと寄付をしてあげるわ」

「別にそういうつもりで話をした訳じゃ」

武蔵は苦笑した。

「いいのよ。厚意による寄付なんだから気にしないで。そして、それだけあなたに感謝をしているという事でもあるのよ」

「だったら言わせて貰う。それだけ感謝をして貰えるのはありがたい。でも、その感謝の量はそのまま君の体の価値だよ」

「そんな事を言われたら、益々、寄付をしたくなるわ」

「何でそうなるの?」

「いいじゃない。あなた、さっき貰えるものは貰うって言っていたわよね!?」

「それはそうだけど」

「あなたのおっしゃりたい事も分かります。感謝をお金に変換すれば、その分、私の体の価値を貶める事になると言いたいんでしょう」

「そういう事になるかな」

「でも、いいのよ。何度も言うけど、本当に厚意による寄付なんだから。遠慮しないで受け取って欲しいわ」

「OK!俺の方も言いたい事は言ったし。遠慮無く頂く事にするよ」

その武蔵の台詞の途中で、突然、部屋に警報がなった。

女が外部の者と連絡を取る。

外部からの連絡によると、パイロットが突然に意識を失ったとの事。

暫くは自動運転で問題無いが、このままだと着陸が出来ない。

今、武蔵は女の所有するプライベートジェットでアメリカへ向かっているところだった。